2014年1月15日水曜日

マルタン・アノタ「2030年には極度の貧困は撲滅されているか?」

Martin Anota "Aura-t-on éliminé l’extrême pauvreté dans le monde en 2030 ?" (D'un champ l'autre, 14 janvier 2014)



世界のうち1.25ドル/日以下で生活する人の数は、ここ数十年で大きく減少した。David Dollar, Tatjana Kleineberg et Aart Kraay (2013)が確認しているとおり、こうした絶対貧困の退潮には経済成長が決定的な役割を果たした。この絶対貧困の現象は、その大部分が中国とインドの急速な成長で説明される。しかし、依然として10億人が今日も極度の貧困(extrême pauvreté)の中で生活している。世界銀行は最近、こうした形態の貧困を減少させるという目的を採択した。すなわち、(2005年の国際価格で)1.25ドル/日以下で生活する人の割合を、2010年の21%から2030年までに3%まで引き下げるというのだ。

Martin Ravallion (2013) は、発展途上国における貧困の減少が現在と同じリズムで将来も進んだと仮定した上で、将来における貧困の割合の予測を試みた。彼はここ数十年における貧困の現象リズムを調べた上で、世界の貧困率は1981年以降毎年1%ポイントずつ減少していると指摘した(グラフを参照)。過去のトレンドを用いることで、Ravallionは発展途上国における貧困率は2027年に3%まで下がると推定しており、これは世界銀行のプログラムよりも3年早い。


グラフ:発展途上国において極度の貧困の中で暮らしている人口のパーセンテージ


Nobuo Yoshida, Hiroki Uematsu et Carlos Sobrado (2014)はこれほど楽観的ではない。彼らはRavallion論文にある複数もの弱点を指摘している。一つには、Ravallionは全ての国に対して同じ人口増加率を仮定しているが、最新の人口予測では人口増加は国によって大きくばらつくことが示されており、これは貧困予測へ大きな影響をもたらさざるをえない。もう一つには、Ravallionは予測を立てるに際して時間とともに世界の所得配分が変化することはないと仮定しているが、彼自身ここ数十年でのそうした変化を認めている。すなわち、各国において経済成長率が異なることや、国内での不平等が拡大することから、世界の所得配分はより不平等になったのだ。YoshidaらはRavallionのアプローチを踏襲しつつも、各国ごとに特定の経済成長率と人口増加率を用い、さらに各国内での不平等の変化を考慮に入れた上で2030年における世界の貧困率を推計している。彼らの推計では、2030年の世界の貧困率はは8.6%であり、世界銀行の3%という目標よりも大分上のほうにある。

彼らの結論は、成長の加速は世界における極度の貧困を迅速に撲滅するためには十分ではなく、一世代で極度の貧困を撲滅するためには(国内及び各国間での)繁栄の分かち合いが非常に重要であるとするKaushik Basu (2013)の主題を支持している。成長の果実は必ずしも経済全体へは行き渡らない。不平等が国家間、さらには国内においても拡大し続けるのであれば、極度の貧困を迅速に撲滅するためには発展途上国は過去に類のない成長率を達成するしかなくなってしまう。世界銀行の目標を達成するためには、著者らによれば、最も貧しい国々の成長を加速させるとともに、そうした成長から人口のうち最も貧しい層がより利益を得るようにすることがとりわけても重要だろうという。しかし、Yoshidaらが改めて悲観的に記しているように、発展途上国が最低でもここ数十年と同等のマクロ経済パフォーマンスを保ち続けるという確証は一切ない。経済危機や単なる成長の鈍化が起きえないわけではないし、先進国における経済活動の停滞が長く続ければ発展途上国の発展も強く抑制されてしまうのだ。



参考文献

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