Martin Anota "L’austérité accroît les inégalités" (22 juin 2013) D'un champ l'autre
先進国において、財政政策は長期において所得の不平等を減少させるのに大きな役割を果たす。1985年から2005年にかけて、OECD加盟国では財政政策は(所得税による所得移転を通じて)年間でジニ係数を平均で約15パーセントポイント(約3分の1)減少させた [Bastagli et alii, 2012]。しかしながら(グローバリゼーションや技術進歩、金融の飛躍的発展に代表される)多くの変化によって、過去数十年所得移転前の不平等が上昇させられる傾向にある。より最近では、税制の累進性を弱める改革の実施が、財政政策の再分配的効果を減少させている。
大停滞(La Grande Récession)は財政への圧力を激化させ、国家が新たな改革を試みるよう促した。というのも、弱々しい経済状況は税収の悪化を招くとともに、景気の自動安定化機能や景気回復策、苦境にある銀行の救済によって公的支出も上昇させるのだ。2010年以降、税の引き上げや公的支出の削減によって、公的債務を減らし、債務の先行きを安定化させることを目的とする複数の施策を多くの国が行ってきた。しかし、もしこれらの施策の実施が早過ぎたものであった場合、これによって経済回復が遅れ、しまいには債務の安定化どころか財政がさらに悪化する可能性がある。それ以外にも、そうした施策は所得不平等の悪化を招きかねない。というのは、危機の影響を最も強く受けた社会階層は、最も人口の多い階層だからだ。そうした社会階層は公的施策に最も依存している層でもあるため、財政緊縮策によって最も生活が不安定化させられる傾向にある。
財政緊縮策の経済活動や公的債務に対する影響は多くの分析の対象となってきたが、それらが所得不平等に対して与えるインパクトと言われるものについての分析は、それよりもずっと少ない。Laurence Ball, Davide Furceri, Daniel Leigh及びPrakash Loungani (2013)は、IMFのワーキングペーパーにおいてこの問いの掘り下げを行った。彼らは、1978年から2009年にかけて17のOECD加盟国が財政再建を行った事例それぞれの研究を行った。
Ballたちは、全ての財政再建の事例において、実際に不平等の上昇がもたらされたことを明らかにした。平均で、財政再建の実施後1年でもたらされるジニ係数の上昇は0.1パーセントポイント(約0.4%)だったが、8年後ではそれが0.9パーセントポイント(約3.4%)だった。また、財政再建を支出削減に基づくものと税の引き上げによるものとで区別すると、支出による調整は平均して所得分配に対して最も大きい影響があった。所得不平等は、支出の調整による財政再建が行われると約1パーセントポイント上昇し、税による財政再建の場合はそれが0.6パーセントポイントだった。この結果は著者にとって驚きではなく、彼らによれば先進国経済における財政政策の不平等への直接的な影響は、支出によるものであるからだという。経済活動が停滞すると、給付金や補助の支払いに関連する支出の上昇が、労働による所得の減少を補償し、需要を下支えすることで所得の不平等を抑えるのである。
続いて、Ballらは財政再建策が一般的に労働者所得の分配率を減少させることを示している。この効果は直接的な経路によって働く。つまり、一部の緊縮策は公共部門の給与の削減を含む。また、より間接的な経路もあり得る。財政再建は失業、特に長期失業を上昇させる。雇用を失うことは労働者の将来所得に悪影響を及ぼし、労働者の健康を悪化させ、彼らの子供の学業成績を悪化させることでその将来進路、つまりはその将来所得の見通しも一変させる。失業期間が長いほどこうした効果は大きくなる。最も多く失業を被るのは、まさに最も職能の低い人々であり、したがって彼らは失業と貧困から抜け出せなくなってしまう恐れがあるのだ。失業期間が長い労働者ほど雇用される機会が少なくなる。というのもそうした失業者は段々と職業適性を失っていき、労働者人口から退出してしまう傾向にあるからだ。マクロ的には、履歴現象が存在するという。つまり失業は固定化する危険性があり、構造的な問題となってしまうのである。Ballらは財政再建が実際に、こうした波及経路を確かなものにする長期に渡る失業を導くことを示している。
1990年代中盤以降、社会保障と税の累進性の貧弱さによって、可処分所得の不平等は課税前所得の不平等よりも速く拡大してきた[Bastagli et alii, 2012]。大停滞が続く中で行われた財政緊縮策はその傾向を加速させるが、更なるマクロ経済的な影響も伴わずにはいないだろう。財政再建はそれ自身で既に総需要を減退させる傾向があるが、不平等の上昇がさらに経済活動を圧迫するとともに回復を遅らせ、回復の遅れは公的債務の持続性を再度危うくさせることを意味する。そしてこれらとともに、所得不平等は財政の不安定要因としてあり続ける。
先進国において、財政政策は長期において所得の不平等を減少させるのに大きな役割を果たす。1985年から2005年にかけて、OECD加盟国では財政政策は(所得税による所得移転を通じて)年間でジニ係数を平均で約15パーセントポイント(約3分の1)減少させた [Bastagli et alii, 2012]。しかしながら(グローバリゼーションや技術進歩、金融の飛躍的発展に代表される)多くの変化によって、過去数十年所得移転前の不平等が上昇させられる傾向にある。より最近では、税制の累進性を弱める改革の実施が、財政政策の再分配的効果を減少させている。
大停滞(La Grande Récession)は財政への圧力を激化させ、国家が新たな改革を試みるよう促した。というのも、弱々しい経済状況は税収の悪化を招くとともに、景気の自動安定化機能や景気回復策、苦境にある銀行の救済によって公的支出も上昇させるのだ。2010年以降、税の引き上げや公的支出の削減によって、公的債務を減らし、債務の先行きを安定化させることを目的とする複数の施策を多くの国が行ってきた。しかし、もしこれらの施策の実施が早過ぎたものであった場合、これによって経済回復が遅れ、しまいには債務の安定化どころか財政がさらに悪化する可能性がある。それ以外にも、そうした施策は所得不平等の悪化を招きかねない。というのは、危機の影響を最も強く受けた社会階層は、最も人口の多い階層だからだ。そうした社会階層は公的施策に最も依存している層でもあるため、財政緊縮策によって最も生活が不安定化させられる傾向にある。
財政緊縮策の経済活動や公的債務に対する影響は多くの分析の対象となってきたが、それらが所得不平等に対して与えるインパクトと言われるものについての分析は、それよりもずっと少ない。Laurence Ball, Davide Furceri, Daniel Leigh及びPrakash Loungani (2013)は、IMFのワーキングペーパーにおいてこの問いの掘り下げを行った。彼らは、1978年から2009年にかけて17のOECD加盟国が財政再建を行った事例それぞれの研究を行った。
Ballたちは、全ての財政再建の事例において、実際に不平等の上昇がもたらされたことを明らかにした。平均で、財政再建の実施後1年でもたらされるジニ係数の上昇は0.1パーセントポイント(約0.4%)だったが、8年後ではそれが0.9パーセントポイント(約3.4%)だった。また、財政再建を支出削減に基づくものと税の引き上げによるものとで区別すると、支出による調整は平均して所得分配に対して最も大きい影響があった。所得不平等は、支出の調整による財政再建が行われると約1パーセントポイント上昇し、税による財政再建の場合はそれが0.6パーセントポイントだった。この結果は著者にとって驚きではなく、彼らによれば先進国経済における財政政策の不平等への直接的な影響は、支出によるものであるからだという。経済活動が停滞すると、給付金や補助の支払いに関連する支出の上昇が、労働による所得の減少を補償し、需要を下支えすることで所得の不平等を抑えるのである。
続いて、Ballらは財政再建策が一般的に労働者所得の分配率を減少させることを示している。この効果は直接的な経路によって働く。つまり、一部の緊縮策は公共部門の給与の削減を含む。また、より間接的な経路もあり得る。財政再建は失業、特に長期失業を上昇させる。雇用を失うことは労働者の将来所得に悪影響を及ぼし、労働者の健康を悪化させ、彼らの子供の学業成績を悪化させることでその将来進路、つまりはその将来所得の見通しも一変させる。失業期間が長いほどこうした効果は大きくなる。最も多く失業を被るのは、まさに最も職能の低い人々であり、したがって彼らは失業と貧困から抜け出せなくなってしまう恐れがあるのだ。失業期間が長い労働者ほど雇用される機会が少なくなる。というのもそうした失業者は段々と職業適性を失っていき、労働者人口から退出してしまう傾向にあるからだ。マクロ的には、履歴現象が存在するという。つまり失業は固定化する危険性があり、構造的な問題となってしまうのである。Ballらは財政再建が実際に、こうした波及経路を確かなものにする長期に渡る失業を導くことを示している。
1990年代中盤以降、社会保障と税の累進性の貧弱さによって、可処分所得の不平等は課税前所得の不平等よりも速く拡大してきた[Bastagli et alii, 2012]。大停滞が続く中で行われた財政緊縮策はその傾向を加速させるが、更なるマクロ経済的な影響も伴わずにはいないだろう。財政再建はそれ自身で既に総需要を減退させる傾向があるが、不平等の上昇がさらに経済活動を圧迫するとともに回復を遅らせ、回復の遅れは公的債務の持続性を再度危うくさせることを意味する。そしてこれらとともに、所得不平等は財政の不安定要因としてあり続ける。
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