2014年2月27日木曜日

ジル・デヴェール「ヤヌコビッチを国際刑事裁判所へ?そりゃ大間違いだ。」

Gilles Devers "Ianoukovitch devant la CPI ? Ce serait une belle erreur" (Actualités du droit, 26 février 2014)



解散することなく最終的な決議を行った議会と人々の手によって行われたという点で、ウクライナの政権崩壊は非常に特徴的だ。こうした動きを支援あるいは邪魔しようとする外国政府の裏工作は既成事実となっている。しかし、このあまり知られていない国における出来事が明らかとなるには、事態の鎮静化を待つべきだろう(たとえアメリカの欧州担当、大した御大臣様であるヌーランドと在ウクライナ米大使の会話[1]によって、またもやアメリカの徹底的なまでの裏工作が明らかになったとしても。。。)

それでも議員はその座に留まり、ヤヌコビッチの国際刑事裁判所(ICC)での訴追を求める決議を行った。曰く「我々はICCに対し、この人道に対する罪の犯人を法廷に立たせるとともに、ヴィクトル・ヤヌコビッチと犯罪の命令を下したその他の高官の訴追を行うことを求める。この3か月、治安維持部隊はキエフを始めとした各都市において、政府高官の命令に基づき、平和的なデモ隊に対して特別の措置や武力を使用した。100人以上のウクライナ及びその他の国の市民が殺害され、

2000人以上が負傷、そのうち500人は重傷である。」

オーケー、でもそれは筋が悪いし、望ましいことでもないように思える。


議会決議はICCのへの提訴に対して何らの効果もない。今の段階ではこれはお願いだ(それもはかない、あるいは全く望みのない望みだ)。ウクライナはICCの加盟国ではない、つまりその管轄権を受け入れていない。ウクライナはローマ規程の署名国ではあるが、批准を行っておらず、それには複雑な手続きの後に議会での議決が必要となる[2]。現在の入り乱れた国内情勢を鑑みれば、そうした議決は明日行えるというようなものではない。

ウクライナはICCの加盟国とならずに、ICCに管轄権を与えることはできる。これは一番簡単な手続きで、手続きを確実に行う能力がなく、かつローマ規程を批准していない新規政権という状況に応えるために制定されたものだ。それを行うためには政府の名に値するものが樹立されなければならない。議会決議は政府の一部の意思を宣言するものであって、そうした手続きを行うには足りない。

最後の解決策としては、安保理によるICCへの付託だ。これは介入的で忌むべきやり方だ。というのも世界の三大国であるアメリカ、ロシア、中国はICCの管轄権に従うことを拒否している一方で、バシル[3]やカダフィのようなブラックリストに載せられた国家元首たちをICCの手にゆだねているからだ。これはICCの道具化であるとともに、さらには国家主権の壁を越えられないICCが必然的にもたらす過ちである。

それではどうすればよいか。政府が樹立され、批准なり管轄権の受諾宣言なりの手続きを開始するのを待つことになる。現状は見せかけの行為に留まるということだ。

しかし基本的に私は、ウクライナによるICCへの訴追を非常に残念に思っている。ウクライナは大国であり、欧州評議会の加盟国でもある(ロシアと同様に)。したがってウクライナは欧州人権条約を施行しなければならず、欧州人権裁判所の監督を受け入れている。過去数か月の間、抑圧の犠牲者たちは欧州人権裁判所への提訴を行っており、裁判所は即座に対応している。ヨーロッパの一部であるウクライナは、ヨーロッパというものが価値あるものであることを示す絶好の機会を持っているのだ。

暴力、殺害、拷問の事実を判断するためのあらゆる資料をウクライナが提出することは疑いない。ウクライナは不安定だが、大国であり、自国の統合を保つ必要性を誰もが重要視している。また、未だ逮捕されていないヤヌコビッチを裁くための、性急かつ法的効果を持たない決議によるICCへ
の呼びかけは、その先行きに大した見込みもない熱狂によるものだ。非常に差し迫った日程で大統領選が行われるとされているのだから、そうした選挙を行うので、訴追に纏わる手続きは進められないというのはどうだろうか。そしてその後に特定個人に集中すればいいのではないか。ただしそれは、検討及び撲滅すべき制度の濫用ではある。それを休眠ネットワークのように放置するならば別だが。

最後に、ウクライナ危機の争点の一つは、ヨーロッパとの関係だ。ICCへといきなり向かうのは、欧州法を信じていない、あるいは危惧してさえいるということを意味することになる。これはよくない。全くもってよくない。ウクライナの新体制は、人権保護のための欧州条約に基づきつつ、ヨーロッパとの結びつきが瑕疵ある制度へと向かうものではなく、法の効力への信頼とともに犯罪へ立ち向かうための社会の構築へと向かうものであることを示す機会に面しているのだ。





[1]:ウクライナの今後の政権について画策する内容の両者の会話が、youtubeにアップされたことを指している。ヌーランドが"fucking EU"と発言していることでも話題となった。

[2]:ICCが非締約国に対して管轄権を行使するためには、(安保理決議を除けば)当該国による管轄権の受諾宣言がなされなければならないため、その決議なしには大統領の訴追決議は意味をもたないという趣旨。かなりテクニカルになるが、別のブログのコメント欄では本記事の次の段落と同様に、アドホックベース(その場限り)管轄権を受諾する可能性について指摘がなされている(が、ブログ主はウクライナの憲法上の問題からその可能性も薄いとしている)。

[3]:オマル・アル=バシール現スーダン大統領。ダルフールにおける虐殺に関し、逮捕状が出ている。

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