Martin Anota "L’avenir de la croissance américaine" (D'un champ l'autre, 25 janvier 2014)
20世紀を通じてアメリカは生活水準の大きな改善を経験した。一人当たりGDPの年間成長率は1870年以降基本的に安定し、ほぼ2%近くだった(グラフ1を参照)。経済成長はしかしながら何度にも渡ってこの線形の傾向から乖離した。1870年から1929年の間では平均で1.76%に落ち着いていたが、第二次世界大戦終了とともに加速し(1950年から1973年には平均で2.5%)、1970年代初めには減速した(1973年から1995年には平均して1.82%)。日本の「失われた10年」や、とりわけても大不況(la Grande Récession)の経験によって、先進国は経済成長の持続的鈍化を経験するという恐れが大きく高まった。というのも、金融危機は生活水準に対して長期の影響をもたらすからである。また、アメリカが最終的には大恐慌の爪痕から立ち直ることができたのに対し、近年の日本はしっかりとした成長を復活させることに失敗し、そのため日本人の生活水準は90年代初頭以降アメリカ人のそれと乖離し続けている。最も悲観的な立場、とくにTyler Cowen (2011)やRobert Gordon (2012)などは、先進国が大停滞を乗り越える前に「大停滞 (great stagnation)」へと陥ったとしており、こうした悲観的な見方は近年ラリー・サマーズが「長期停滞(secular stagnation)」について行ったスピーチとも共通している。
John Fernald et Charles Jones (2014) もまた、アメリカの長期における成長の見通しについて焦点を当てている。その著者の一人であるジョーンズは、これ以前に発表した半内生的成長モデルにおいて、長期の成長は新しいアイデアの発見に依っているとした[Jones, 2002]。すなわち、生産は基本的には物的資本、労働時間、一人当たり人的資本、アイデアのストックに依存しているという。Romer (1990)によれば、アイデアの非競合性という性質は収穫逓増をもたらすため、一人当たり所得は経済におけるアイデアの総量に依存する。つまり、新規のアイデア一つ一つは全員に利益をもたらすのである。長期においては、アイデアのストックは研究者の数に比例し、研究者の数は人口にひれいするため、成長をアイデアに依存する経済にとって規模が重要となる。
フェルナルドとジョーンズは1950年から2007年にかけての期間におけるアメリカの経済成長の要因を調べた。彼らのモデルにおいて一人あたりの生産は、生産に対する資本比率 (Robert Solow [1956]と同様)、一人当たり人的資本(Robert Lucas [1988]と同様)と、研究開発の集中度、すなわち新規アイデア開拓のための投資率(Paul Romer [1990]やネオシュンペータリアンであるPhilippe Aghion et Peter Howitt [1992]と同様)、そして人口に依存する。アイデアのストックは研究開発の強さと人口と関係している。そして、この経済成長の現代理論の示すところでは、1950年以降のアメリカの経済成長の4分の3以上は教育水準の上昇や、とりわけても研究への集中に起因しており、年間成長率2%のうち前者は0.4%ポイント、後者は1.2%ポイントを占めている。
過去半世紀におけるアメリカの成長はしたがって、一時的な要因のおかげであった。教育水準の上昇、経済開発に関する研究開発の集中度、そして人口は、今後数十年においては過去におけるそれよりも大きく低くなると思われる。教育水準の上昇は既に減速の最中にあり(グラフ2を参照)、労働力率もどこかで頭打ちになるだろう。したがって、アメリカにおける生活水準の上昇もまた今後数十年間は過去よりもゆっくりとしたものになる可能性がある。
さらに、アイデアの生産も収穫逓減となる可能性がある。すなわち、アイデアを見つければ見つけるほど、新しいものを見つけるのは難しくなるということだ。このイノベーションの枯渇という考えこそまさに、タイラー・コーエンやロバート・ゴードンが大停滞の説明において前面に打ち出しているものだ。フェルナルドとジョーンズはしかしながら、アイデア生産の収穫逓減は必ずしも経済成長の持続と両立しえないものではないとしている。すなわち、研究者の数が指数的に増大するのであれば、経済成長の持続は保証されるという。そして、中国やインドをはじめとする発展途上国の台頭によって必然的に世界の研究者数のより急速な上昇がもたらされるため、これらの国が技術フロンティアの押し上げに段々と貢献していくことだろう。
加えて、Erik Brynjolfsson et Andrew McAfee (2012)で議論されたように、人工知能の発展によって財やサービスの生産において徐々に労働力を資本に置き換えていくことが可能となる。先進国においては、過去数十年に渡って所得の分配が既に資本に傾く基調にある(逆に言えば労働への分配が減っている)。技術進歩による要素で労働が置き換えられるというこの傾向は、この先数十年も続くはずだ。こうしたダイナミズムは供給を促進するため、フェルナルドとジョーンズはこれによって長期成長が強化されるとみている。彼らはしかしながら、不平等の上昇は逆に長期見通しにとってマイナス要因となりうることも指摘している。
20世紀を通じてアメリカは生活水準の大きな改善を経験した。一人当たりGDPの年間成長率は1870年以降基本的に安定し、ほぼ2%近くだった(グラフ1を参照)。経済成長はしかしながら何度にも渡ってこの線形の傾向から乖離した。1870年から1929年の間では平均で1.76%に落ち着いていたが、第二次世界大戦終了とともに加速し(1950年から1973年には平均で2.5%)、1970年代初めには減速した(1973年から1995年には平均して1.82%)。日本の「失われた10年」や、とりわけても大不況(la Grande Récession)の経験によって、先進国は経済成長の持続的鈍化を経験するという恐れが大きく高まった。というのも、金融危機は生活水準に対して長期の影響をもたらすからである。また、アメリカが最終的には大恐慌の爪痕から立ち直ることができたのに対し、近年の日本はしっかりとした成長を復活させることに失敗し、そのため日本人の生活水準は90年代初頭以降アメリカ人のそれと乖離し続けている。最も悲観的な立場、とくにTyler Cowen (2011)やRobert Gordon (2012)などは、先進国が大停滞を乗り越える前に「大停滞 (great stagnation)」へと陥ったとしており、こうした悲観的な見方は近年ラリー・サマーズが「長期停滞(secular stagnation)」について行ったスピーチとも共通している。
グラフ1:アメリカにおける一人当たりGDP(2009年ドルベース)
John Fernald et Charles Jones (2014) もまた、アメリカの長期における成長の見通しについて焦点を当てている。その著者の一人であるジョーンズは、これ以前に発表した半内生的成長モデルにおいて、長期の成長は新しいアイデアの発見に依っているとした[Jones, 2002]。すなわち、生産は基本的には物的資本、労働時間、一人当たり人的資本、アイデアのストックに依存しているという。Romer (1990)によれば、アイデアの非競合性という性質は収穫逓増をもたらすため、一人当たり所得は経済におけるアイデアの総量に依存する。つまり、新規のアイデア一つ一つは全員に利益をもたらすのである。長期においては、アイデアのストックは研究者の数に比例し、研究者の数は人口にひれいするため、成長をアイデアに依存する経済にとって規模が重要となる。
フェルナルドとジョーンズは1950年から2007年にかけての期間におけるアメリカの経済成長の要因を調べた。彼らのモデルにおいて一人あたりの生産は、生産に対する資本比率 (Robert Solow [1956]と同様)、一人当たり人的資本(Robert Lucas [1988]と同様)と、研究開発の集中度、すなわち新規アイデア開拓のための投資率(Paul Romer [1990]やネオシュンペータリアンであるPhilippe Aghion et Peter Howitt [1992]と同様)、そして人口に依存する。アイデアのストックは研究開発の強さと人口と関係している。そして、この経済成長の現代理論の示すところでは、1950年以降のアメリカの経済成長の4分の3以上は教育水準の上昇や、とりわけても研究への集中に起因しており、年間成長率2%のうち前者は0.4%ポイント、後者は1.2%ポイントを占めている。
過去半世紀におけるアメリカの成長はしたがって、一時的な要因のおかげであった。教育水準の上昇、経済開発に関する研究開発の集中度、そして人口は、今後数十年においては過去におけるそれよりも大きく低くなると思われる。教育水準の上昇は既に減速の最中にあり(グラフ2を参照)、労働力率もどこかで頭打ちになるだろう。したがって、アメリカにおける生活水準の上昇もまた今後数十年間は過去よりもゆっくりとしたものになる可能性がある。
グラフ2:同世代ごとの教育水準
さらに、アイデアの生産も収穫逓減となる可能性がある。すなわち、アイデアを見つければ見つけるほど、新しいものを見つけるのは難しくなるということだ。このイノベーションの枯渇という考えこそまさに、タイラー・コーエンやロバート・ゴードンが大停滞の説明において前面に打ち出しているものだ。フェルナルドとジョーンズはしかしながら、アイデア生産の収穫逓減は必ずしも経済成長の持続と両立しえないものではないとしている。すなわち、研究者の数が指数的に増大するのであれば、経済成長の持続は保証されるという。そして、中国やインドをはじめとする発展途上国の台頭によって必然的に世界の研究者数のより急速な上昇がもたらされるため、これらの国が技術フロンティアの押し上げに段々と貢献していくことだろう。
加えて、Erik Brynjolfsson et Andrew McAfee (2012)で議論されたように、人工知能の発展によって財やサービスの生産において徐々に労働力を資本に置き換えていくことが可能となる。先進国においては、過去数十年に渡って所得の分配が既に資本に傾く基調にある(逆に言えば労働への分配が減っている)。技術進歩による要素で労働が置き換えられるというこの傾向は、この先数十年も続くはずだ。こうしたダイナミズムは供給を促進するため、フェルナルドとジョーンズはこれによって長期成長が強化されるとみている。彼らはしかしながら、不平等の上昇は逆に長期見通しにとってマイナス要因となりうることも指摘している。
参考文献
AGHION, Philippe & Peter HOWITT (1992), « A model of growth through creative destruction », in Econometrica, vol. 60, n° 2, mars.
BRYNJOLFSSON, Erik & Andrew MCAFEE (2012), Race Against the Machine: How the Digital Revolution is Accelerating Innovation, Driving Productivity and Irreversibly Transforming Employment and the Economy.
COWEN, Tyler (2011), The Great Stagnation: How America Ate All The Low-Hanging Fruit of Modern History, Got Sick, and Will (Eventually) Feel Better.
GORDON, Robert J. (2012), « Is U.S. economic growth over? Faltering innovation confronts the six headwinds », NBER working paper, n ° 18315, août.
JONES, Charles I. (2002), « Sources of U.S. economic growth in a world of ideas », inAmerican Economic Review, mars, vol. 92, n° 1.
LUCAS, Robert E. (1988), « On the mechanics of economic development », in Journal of Monetary Economics, vol. 22, n° 1.
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